[本] マルコム・グラッドウェル『ティッピング・ポイント』

 ある商品やサービスが急激にヒットし、他に競合があるにも関わらず市場を席巻する、という現象をしばしば目にすることがある。例えばiPodはまさにそうだったし、最近だとNintendo DS人気がPS2市場さえも食い尽くし兼ねないほどに広がっている。あるいはYouTubeがいかに短期間で今の地位を築いたか、思い出してみるのもいいだろう。そうした、形勢が一気に「傾く」現象はそれほど珍しいことではなく、むしろネットで情報伝達が早くなったためか、近年ますます増えつつあるように思う。
 そんな爆発的ブームを理由づけて説明しようとしたビジネス書、『ティッピング・ポイント』。何年か前に米国でベストセラーとなり、今でもそこそこ支持されている本らしい(2007年2月現在でも本家 Amazon.com で書籍37位) 。ハッシュパピーやセサミ・ストリートなど実在の成功例を元に、どのような条件が揃えば劇的にヒットするのか、という仮説を打ち立てた野心的な内容。

ティッピング・ポイント―いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか
マルコム グラッドウェル Malcolm Gladwell 高橋 啓

ティッピング・ポイント―いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか
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 要するにヒットが生まれるメカニズムの考察なのだけど、よくある低俗ビジネス書みたいに「こうすれば売り上げが10倍に!」とかいう怪しげなHow-To本ではなく、あくまで実例とそれに対する仮説を積み上げに徹しており、なかなか好感が持てる。仮説、といっても科学的に検証できる類のものとは思えないが、それでも爆発的ブームという現象自体は実在するわけで、百匹目の猿現象みたいなデタラメよりは遙かに信憑性がある。割れ窓理論スタンフォード監獄実験などが出てくるのも個人的にちょっと嬉しい。やや例が長くて冗漫な部分もあるけど、ブームに対する考え方の足がかりを得る本として、読む価値はあると思う。(★★★★)

Tipping Point - Wikipedia

Tipping Point - Net Version
 よくまとまっている要約。これだけ読めば大体分かるかも。
http://radio.weblogs.com/0107127/stories/2003/01/01/tippingPointNetVersion.html


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