[映画] 『ロゼッタ』
貧しい生まれのティーンエイジ、ロゼッタ。住まいはトレーラーハウス、母親はアル中のホワイトトラッシュ、仕事もなかなか見つからず、長靴で魚を釣ったりして飢えを凌ぐ日々。そんな彼女の日常の一部分、仕事をクビになるシーンから始まり、なんとかありついた別の仕事もやっぱり辞めることになってしまうまでの、鬱々とした抑揚の無い顛末を描いたベルギー=フランス映画。1999年のパルム・ドール賞作。
ロゼッタ
ジャン=ピエール・ダルデンヌ リュック=ピエール・ダルデンヌ エミリー・ドゥケンヌ
ジェネオン エンタテインメント 2000-10-27
売り上げランキング : 40160
おすすめ平均
同情するなら職をくれ
作業している時の心理
人間描写の巧妙さの光る奇跡的映画。
撮影は手持ちカメラで、演出も音楽も皆無のドキュメンタリー風。ストーリーらしいストーリーも無く、なんとか自力で生きていこうとするロゼッタに淡々と降りかかる災難を、ものすごく悲劇的というわけでもなく、けれども十分に痛々しいトーンで撮り続けていくという、あまり普通の人にはお勧めできない内容だ。ラース・フォン・トリアーから映像美を除いて、アキ・カウリスマキからユーモアを取り去ったような作風と思えば、まあ大きくは間違っていないだろう。
一見するとものすごく退屈な映画に見えるが、それでもジャック・リベットに比べればどうということもなく、ヨーロッパ映画ファンなら普通に楽しく鑑賞できるラインだろう。それよりも貧困生活の空気感や、ロゼッタ役のエミリー・デュケンヌの演技はかなりのもの。また、こうした起承転結の無い話を綺麗に終わらせるのはいかにも難しそうだが、この『ロゼッタ』のラストシーンとその締め方は見事だと思う。(★★★★)