[本] ジェイムズ・P・ホーガン『時間泥棒』
『星を継ぐもの』『終局のエニグマ』等で知られるJ・P・ホーガンの、一風変わった時間系SFの中篇。ニューヨーク市で発生する、局地的な時間の遅れ。「エイリアンが時間を盗んでいるんじゃない?」という有識者の適当な仮説を背負って、一介の刑事が原因の調査を始める。心霊術師や司祭も巻き込んで仮説の検証を進めるが、やがて時間だけではなく物質にまで影響が及びだし──。
J・P・ホーガンと言えばハードSF(個人的にはあまり読まないジャンル)のイメージがあったが、こちらは完全にユーモアSF。冗談みたいなストーリー展開は、一歩間違えれば火浦功にも通じるものがある。登場人物がことごとくすっとぼけているのも面白いし、必要以上に引き延ばさないで短く完結させている点も良い。時間が遅れている空間は赤方偏移で赤っぽく見える、というイメージもそれっぽい。こうした安定感は、さすがベテランといったところだろう。