[本] ダイアナ・ウィン・ジョーンズ『九年目の魔法』
『ハウルの動く城』の原作者、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの『九年目の魔法』を。1984年の作品。十歳の頃にまぎれ込んだ葬式をきっかけに、奇妙な記憶の食い違いを感じるようになった少女ポーリィと、彼女の空想話に付き合って英雄譚を考案するチェロ奏者の男リンとの物語。カテゴリー的には児童文学だが、現代を舞台に度が過ぎない程度の魔法と、微かな恋愛風味をミックスした、大人も読めるような内容となっている。
主役のポーリィとリンのキャラクターがともかくも魅力的で、その掛け合いや架空の設定作りは非常に面白い。魔法のロジックや場面描写が分かりづらい箇所が幾つかあるものの、雰囲気そのものはとても良く、全体として良作だと思う。あと、作中に主人公が読んでいる本が素晴らしい名作揃いで、本好きなら思わず顔がほころぶはず(『金枝篇』をティーンエイジャーが楽しんで読んでいるシーンだけは首を傾けるが)。