[本] L・ロン・ハバード『フィアー―恐怖』

 『フィアー―恐怖』。タイトルからしてC級ホラー臭い上に、装丁も見るからにいまいちそうな単行本。普通ならスルーするところだが、作者があのL・ロン・ハバードとなれば、話は違う。サイエントロジーの創始者にして、歴史的駄作と名高い映画版『バトルフィールド・アース』の原作者でもある、文字通りのカルト的人気SF作家、L・ロン・ハバードが、どんなホラー小説を書いていたのか、ちょっと興味があったので読んでみた。
 民俗学者の主人公は、「この世に科学で説明できないものは無い。霊や悪魔なんてものは妄想に過ぎない」と公言してはばからない男だった。しかし、あるとき彼は帽子と、四時間もの記憶を失う。失った記憶を求めるうち、幻想の世界に迷い込み、非現実的な現象に見舞われる主人公。そして、「帽子と四時間を見つければ、命を失うだろう」という警告通り、帽子を見つけた彼に、破滅的な災厄が降りかかる。
 1951年に書かれたことを考えれば、とてもよく出来た『不思議の国のアリス』の亜流ホラー。途中まではそれほどでもないけど、期待を裏切らない結末に落ち着くのが少し心地よい。現代の読者としては物足りない面は多々あるが、古典として読む分には優れた中篇だと思う。

L・ロン・ハバード 『フィアー―恐怖』

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