[本] ジョレミ―・ドロンフィールド『飛蝗の農場』
ジョレミ―・ドロンフィールド作、『飛蝗の農場』。郊外で飛蝗の飼育場を営む女性が、嵐の夜に雨宿りを求めてきた見知らぬ男をショットガンで撃ってしまう。女は、ショックで記憶を失った男を介抱し、記憶を取り戻す手助けを始めるが、やがて「汚水溝の狩猟者」を名乗る連続殺人鬼が二人に迫る。
という、ちょっと『イングリッシュ・ペイシェント』っぽい設定のサスペンス小説。何年か前の「このミステリーがすごい!」海外部門一位の作品、ということで読んではみたものの、どうにも乗り切れないまま終わってしまった。それほど欠点があるわけでもないが、全体として中途半端な印象。ありえない偶然や犯人の突拍子が無さすぎる動機のおかげでミステリーにはなりきれてないし、サスペンスとしては登場人物、特に真犯人の魅力が薄すぎる。もう少し描写や設定が写実的でなければ良い幻想小説になった気もするが、そんな感じでも無い。あとがきと解説にも重ねて書かれている、「なんだ、これは?」というのが感想として一番しっくりくる、そんな小説。文章は達者で構成もしっかりしているだけに、少し残念だ。