[本] トム・クランシー『合衆国崩壊』
今さらながら、トム・クランシーの『合衆国崩壊』を読了。とうとう大統領にまでなってしまったあのジャック・ライアンが、テロ攻撃と中東情勢とに立ち向かう、500ページ級文庫4分冊の大作。
JALの旅客機が国会議事堂に特攻し、米国首脳陣はほとんど壊滅。一方イラクも独裁者を暗殺され、政権の崩壊に陥っていた。この機に応じてイランの指導者は、アメリカにウイルス兵器によるテロ(空気感染するエボラウイルス!)をしかけ、アメリカ国内の混乱を広げる。さらに中国政府を操り台湾との小競り合いを起こさせ、湾岸近辺の艦隊が遠ざかった隙に、サウジアラビアへの侵攻を開始する。という、かなりとんでもないストーリー。
結果としてアメリカは、テロの主犯を証拠とともに挙げ、イランへの宣戦を布告。かろうじてサウジに送り込んだ兵力と最新装備により、イラン連合軍を鮮やかに撃退する。ついでに諜報部員の活躍により、イランの指導者をピンポイント攻撃で抹殺し、ごく短期間で戦争を終結させる。
中東からテロ攻撃を受けたアメリカが反撃として戦争を始める、というのはどこかで聞いた話ではある。9.11より前に書かれたこの小説では(アメリカにとって)ほとんど理想的な解決を迎えるが、現実の方は泥沼化の一途を辿るばかり(もう何の大義名分が残っているのかもよく分からない)。今の大統領がジャック・ライアンのせめて十分の一でも有能だったら、世界はもう少し違っていたかも知れないのに。