[本] ウィリアム・ヒョーツバーグ『ポーをめぐる殺人』

October 29th, 2007

 ミッキー・ローク主演『エンゼル・ハート』の原作、『墜ちた天使』で有名な(と言うよりそれしか知らなかった)ウィリアム・ヒョーツバーグ。その1994年の作品、『ポーをめぐる殺人』を。
 1920年代のニューヨークで、『モルグ街の殺人』『マリー・ロジェ』『早すぎた埋葬』といったポーの作品をなぞった殺人事件が発生。その魔手が世紀の奇術師フーディーニと、訪米中のコナン・ドイルに迫る。心霊主義を否定するフーディーニの前には本物の霊媒師が、超自然の存在を信じるコナン・ドイルの前にはポーの亡霊が現れ、話はますますオカルトじみた展開を見せるが……。
 ポー、ドイル、フーディーニ、他にもデンプシー等々の歴史的人物が次々と登場する、賑やかなB級小説。一見するとミステリーかとも思ったが、実はミステリーともホラーともファンタジーともつかない、妙な方向に発展するのが、『墜ちた天使』(ハードボイルドとオカルトの混合作品)のヒョーツバーグらしい。全体としては終盤に若干に尻すぼみ感が残るものの、時代背景や主役のフーディーニ、コナン・ドイル共にとても魅力的に描かれており、心霊現象への見解で対立していた二人が手を組んで事件の解決に当たるくだりは非常に面白かった。ポーの短編をあらかた知っていて、『墜ちた天使』が好きな人であれば文句なくお勧め。

ウィリアム・ヒョーツバーグ 『ポーをめぐる殺人』

[映画] 『ヘアスプレー』

October 21st, 2007

 10月公開映画の中で最注目作(僕の中で)の、『ヘアスプレー』を。あの『ピンク・フラミンゴ』のジョン・ウォーターズ監督作品の中では比較的に変態性の薄い『ヘアスプレー』の、リメイク版。まあハリウッドのメジャータイトルだし、そこそこ無難な出来になっているだろうと思って観たら。
 これがなかなか、普通に面白かった。いや、本当に。黒人差別やデブ差別をテーマに据えながら、底抜けに脳天気でポジティブな展開で微塵も深刻さを感じさせずに、勢いで最後まで突っ走る、娯楽ミュージカルの鑑のような作品だった。ジョン・ウォーターズ(とディヴァイン)の変態性や皮肉っぽさはもはや感じられないが、代わりに「『ヘアスプレー』ってこんなにいい映画だったっけ?」って思ったくらい、万人受けし得る一級の娯楽作品に生まれ変わっていた。日本では大ヒットはしないだろうけど、60年代のロケンロールと無駄に明るいミュージカルに抵抗の無い人なら、頭を空っぽにして楽しめるはず。
 それにしても、クリストファー・ウォーケンとジョン・トラボルタが夫婦役で共演するのを観る日が来るとは思わなかった。

2007年版 『ヘアスプレー』

[ゲーム] あの巨大掘削機が。

October 18th, 2007

 衛星写真でも視認可能な、バカげたサイズのあの掘削機が、ついに FPS の世界に侵出。

excavator

 『ヘイロー』のスカラベが可愛く見えるくらいの威圧感と重厚感。こんなのが迫ってきたら夢に出そう。
 実在する世界最大級の掘削機の写真はこちら。

GIGAZINE

 

[ゲーム] “Minerva: Metastasis”

October 13th, 2007

 ”Half-Life 2″と言えば、先日発売された新作パッケージ”Orange Box” (”Half-Life 2: Episode Two”他) がかなり好評みたいだが、それに先だって “MINERVA” の新チャプターがリリースされていたようだ。全然気づかなかった。

Image:Metastasis helicopter and vista

 ”MINERVA”は、”Half-Life 2″のフリー公開されているシングルプレイMODの中でも最良の部類の一つ。そのクオリティの高さや、”Half-Life 2″を踏襲しつつミステリアスに仕上げた世界観が魅力。前回のアップデートから随分経つので、もうどんな話だったかよく覚えていないが、プレイする価値はまだ十分あるはずだ。なお、要”Half-Life 2: Episode One”とのこと。

http://www.hylobatidae.org/minerva/

[本] アヴィ『クリスピン』

October 10th, 2007

 2003年度ニューベリー賞受賞作、『クリスピン』を。ニューベリーの受賞作と言えば『ザ・ギバー』や『めぐりめぐる月』、『穴』など、個人的にヒット率が高いので、機会があれば読むようにしている。この『クリスピン』もその一つ。十四世紀イングランドを舞台にした、少年クリスピンの冒険小説。
 クリスピンの出生には秘密があり、それがために領主の執事から命を狙われる。という筋の話だが、非常にミニマムなストーリー展開にちょっと驚いた。現実の中世が舞台なため、魔法や怪物は当然存在せず、クリスピンに特別な力があるわけでもない(出生の秘密自体も、それほどたいしたものじゃない)。活劇シーンもラストに少しあるくらいで、その内容もとても淡泊だ。率直に言って、児童が読んでもそれほど面白がる話ではない気がする。
 全体的にキャラもストーリーも薄い印象があるものの、「熊」と呼ばれる大男だけは非常に生彩があり魅力的。話もシンプルで最小限に近いが、クリスピンが成長するためのポイントはきっちり押さえてあり、まあ十分と言えるだろう。中世の頃の、現実離れしていない手頃な冒険譚を読みたい大人向けの児童文学、といった体の作品だと思う。

アヴィ 『クリスピン』

[本] フレッド・ハプグッド『マサチューセッツ工科大学』

October 3rd, 2007

 日本でもMITの略称で知られるマサチューセッツ工科大学の、歴史とその校舎、ナードの生態を示すエピソード、幾つかの研究の概要について描いた、ノンフィクションの小品。後半の技術研究話は、本自体が古いこともあってそれほど興味は惹かれないが、自動楽譜めくり機という古典的な(しかし恐ろしく難しい)問題の魅力と泥沼にはまったエンジニアを描いた第一章、MITの学生たちの奇矯なユーモア(「MITでなにかを学ぶとしたら、それは自殺の方法だ」)の第二章、MITがエンジニアリングから出発していかにサイエンスを取り込んでいったかの第五章はなかなか興味深い。MITの歴史や、エンジニアという生物の生態を少しだけ垣間見るには手頃な本だと思う。




MIT Corridor

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[本] L・ロン・ハバード『フィアー―恐怖』

September 27th, 2007

 『フィアー―恐怖』。タイトルからしてC級ホラー臭い上に、装丁も見るからにいまいちそうな単行本。普通ならスルーするところだが、作者があのL・ロン・ハバードとなれば、話は違う。サイエントロジーの創始者にして、歴史的駄作と名高い映画版『バトルフィールド・アース』の原作者でもある、文字通りのカルト的人気SF作家、L・ロン・ハバードが、どんなホラー小説を書いていたのか、ちょっと興味があったので読んでみた。
 民俗学者の主人公は、「この世に科学で説明できないものは無い。霊や悪魔なんてものは妄想に過ぎない」と公言してはばからない男だった。しかし、あるとき彼は帽子と、四時間もの記憶を失う。失った記憶を求めるうち、幻想の世界に迷い込み、非現実的な現象に見舞われる主人公。そして、「帽子と四時間を見つければ、命を失うだろう」という警告通り、帽子を見つけた彼に、破滅的な災厄が降りかかる。
 1951年に書かれたことを考えれば、とてもよく出来た『不思議の国のアリス』の亜流ホラー。途中まではそれほどでもないけど、期待を裏切らない結末に落ち着くのが少し心地よい。現代の読者としては物足りない面は多々あるが、古典として読む分には優れた中篇だと思う。

L・ロン・ハバード 『フィアー―恐怖』

[弾幕] 『東方風神録』

September 25th, 2007

 遅ればせながら、やっと『東方風神録』を一般委託販売で入手。とりあえず NORMAL は初見でも何とかなったものの、さすがに EXTRA はそうはいかず。

初めての風神録Extra

 ボスの二枚目で敢えなく圧殺される。本編の、NORMAL ですら結構厳しい弾幕といい、EXTRA の特殊弾幕といい、これはかなり難しそうだ。まあ、気長に攻略していこうかと。

[本] ロバート・ホワイティング『東京アンダーワールド』

September 19th, 2007

 戦後日本の混乱期に来日し、闇市で一儲けしてピザハウスで旗揚げした男、ニコラ・ザペッティ。闇社会のヤクザやレスラーとも親交深く、一時は六本木の帝王とまで呼ばれたこの「ガイジン」の破天荒な人生を軸に、戦後日本のアンダーワールドを描いたノンフィクション本。
 本筋となるニコラ・ザペッティの山有り谷有り(後半はほとんど谷ばかりだが)な人生も興味深いが、その周辺に描かれる闇社会的な出来事がとにかく面白い。例えばアメリカ進駐軍の、日本から祖国への送金が給料の総額を遙かに超えていたり(つまり闇市の取引で)、北朝鮮出身であることを隠されつつヒーローになった力道山が影で賭博場を仕切っていたり、ロッキードを始めとする航空会社が六本木界隈で関係者を激しく接待していたり。そんな、教科書に載っている昭和史の裏側が垣間見える、なかなか楽しい内容だった。この中の闇社会の構造はある程度現代にも通じるはずで、下手な日本史の本を読むよりもためになると思う。

 http://www.nicolas-pizzahouse.com/
 今も残る、ニコラが始めたピザのブランド。日本に帰化までしたニコラ小泉が、日本のルールやビジネスの壁に阻まれて没落する後半はちょっと切ない。

ロバート・ホワイティング 『東京アンダーワールド』

[弾幕] 斑鳩 on Xbox LIVE!

September 13th, 2007

 年末商戦に向けたXbox360のゲームタイトルが発表に。『Ninja Gaiden 2』の制作発表や『ロストオデッセイ』は規定路線だし割とどうでもいいが、それよりも Xbox Live アーケードのタイトルに『斑鳩 IKARUGA』が。弾幕シューティング史に名を残す名作でありながら、Dreamcast、GAMECUBEというあまり恵まれない機種でしかリリースされなかった『斑鳩』。GAMECUBE版の中古を買って(プレミア価格にも目をつぶって)Wiiでプレイしようかと本気で検討していただけに、この発表は嬉しい。まだ移植の完成度は不明だが、トレジャーならきっと十分な出来に仕上げてくれるだろう。




Playing IKARUGA 2002_0926_135306AA.JPG
Originally uploaded by toughkidcst

 Flickrより。そうか、自分が横になるという手があったか。