[映画] 『オリバー・ツイスト』
チャールズ・ディケンズの代表的作品の一つ、『オリバー・ツイスト』。かなり昔に読んだせいか、イメージが『二都物語』や『デイヴィッド・コパフィールド』や『大いなる遺産』とごっちゃになりがちな古典小説を、巨匠ロマン・ポランスキーが映像化。
オリバー・ツイスト
ロナルド・ハーウッド ロマン・ポランスキー バーニー・クラーク
ポニーキャニオン 2006-06-30
売り上げランキング : 14337
おすすめ平均
作り方が勿体無いけれども、素晴らしい映画です!
起伏なし・テンポ遅い・・・
普通の子供映画とは目線が違う
まず19世紀ロンドンを再現したプラハ撮影の映像は、文句なく素晴らしい。偏執狂のポランスキーだけあって、セットのディテールにかけては全く容赦が無い。老若男女が混在する役者陣も実力派揃いで、特にフェイギンを演ずるベン・キングズレーの存在感は見事。状況に流されがちで影も幸も薄い主人公オリバー・ツイスト(バーニー・クラーク)に比べて、フェイギンは最期まで憎みきれない小悪党っぷりで観客を魅了する。原作が原作で変な脚色も無いため(ポランスキーだし)話が古臭いのは否めないが、それを差し引いても普通に良い映画ではある。(★★★★)
ではあるけれども、昔のポランスキー作品を知る身としては、最近の「普通に感動」路線はちょっと残念だ。ポランスキーの昔の作品には傑作パラノイア映画が揃っており(例えば『ローズマリーの赤ちゃん』や『反撥』)、他のまともな神経を持った監督では真似できない代物だった。特に『テナント/恐怖を借りた男』の病んだ感性は本当に素晴らしく、この映画をポランスキーの最高傑作に推す人も少なくない(日本でも五人は下らないだろう。僕を含めて)。『戦場のピアニスト』『オリバー・ツイスト』みたいな普通の良作は他人に任せて、早く昔のパラノイア路線に戻ってきて欲しいのだけれど。