[本] ロバート・ホワイティング『東京アンダーワールド』
戦後日本の混乱期に来日し、闇市で一儲けしてピザハウスで旗揚げした男、ニコラ・ザペッティ。闇社会のヤクザやレスラーとも親交深く、一時は六本木の帝王とまで呼ばれたこの「ガイジン」の破天荒な人生を軸に、戦後日本のアンダーワールドを描いたノンフィクション本。
本筋となるニコラ・ザペッティの山有り谷有り(後半はほとんど谷ばかりだが)な人生も興味深いが、その周辺に描かれる闇社会的な出来事がとにかく面白い。例えばアメリカ進駐軍の、日本から祖国への送金が給料の総額を遙かに超えていたり(つまり闇市の取引で)、北朝鮮出身であることを隠されつつヒーローになった力道山が影で賭博場を仕切っていたり、ロッキードを始めとする航空会社が六本木界隈で関係者を激しく接待していたり。そんな、教科書に載っている昭和史の裏側が垣間見える、なかなか楽しい内容だった。この中の闇社会の構造はある程度現代にも通じるはずで、下手な日本史の本を読むよりもためになると思う。
今も残る、ニコラが始めたピザのブランド。日本に帰化までしたニコラ小泉が、日本のルールやビジネスの壁に阻まれて没落する後半はちょっと切ない。