[本] ロバート・コーミア『心やさしく』
ヤングアダルト文学の名手、ロバート・コーミア。日本ではあまり有名ではないかも知れないが、一作一作の完成度が非常に高く、簡潔な文体で微妙な心理を描き、ついでにラストの衝撃度が半端でない作品揃いで、僕が個人的に最も好きな作家の一人だ。『チョコレート戦争』、”I Am the cheese”あたりはタイトルのポップさとは裏腹に、本当に恐るべき作品であり、万人が読むべき小説だと思う。
『心やさしく』も、家出少女がサイコパスの少年シリアルキラーに憧れて会いに行く、という何とも “Tenderness”っぽくないストーリーだ。少年の余罪を確信してつけ狙う老警官も絡んで、コーミアのあの流れるような筆致で話は展開し、やはり恐るべき結末に到達する。淡々とし過ぎている感も無くはないが、この奇妙な読後感はやはりロバート・コーミアならではのもの。やはりこの人の作品は面白い。