Archive for July, 2008


[ガジェット][PC] “Eee PC 901-X” を購入。

Sunday, July 13th, 2008

世間を騒がす iPhone はさておき、低価格ミニノートの “Eee PC 901-X” を購入。iPhone の発売日当日に発表、翌日から発売という、ニュースの注目度的には最悪のタイミングでリリースされた機種だが、前評判以上に良いコストパフォーマンスだったので、思わず即日に買ってしまう。11日に Yodobashi.com で予約し、12日に到着。59,800円で10%還元なので、実質 54,000~55,000円ぐらいか。

大きさは教科書サイズを少し大きくしたぐらい。1キロオーバー (1.1kg) なので、ずしりとした重みはあるが、手持ちの MacBook (2.3kg) と比べればさすがに確実に軽い。これまで MacBook や軽重量級の PC ノートを苦労して持ち運んでいたが、これならそれほど負担は感じないだろう。一方、厚みは意外なくらいあり、特にヒンジ真下のバッテリー部分が厚み、重量ともに大きい。まあ厚いと言っても、封筒に入れようとしない限りは特に問題にならないと思う。

キーボードは、個人的には絶対に外せない日本語配列(かな入力派の人間にとって、英語キーボードほど苛立たしいものはない。この時点で HP のは問題外だった)。このサイズによく詰めてくれたとは思うけど、右側4列の詰め方は「無茶しやがって」というレベル。この部分のキーピッチだけはシグマリオンを思わせるが、あとは結構いける。ただ、「半角/全角」キーだけがちょっと変態的な位置にあり、慣れるまでちょっと苦労しそう。

液晶はノングレアの 8.9 型、1024×600。光沢タイプじゃないのは個人的に嬉しい (Acer の Aspire one はアウト) 。画質は悪くなく、視野角も良好。初代 Eee PC の解像度 (800×480) は店頭で見た限りちょっとあり得ないと思ったが、この解像度なら何とか実用に耐えられそうだ。ブラウザも、全画面表示にすれば縦、横ともにそこそこ表示できる。

CPU を含めた性能は、これくらいの動画ならなんとか表示できる程度。場面によってはコマ落ちする(ただ、このアニメなら多少コマ落ちしても何ら問題は無い)。Intel の最新 CPU の Atom ではあるが、特に性能が高いというものではないので、Firefox のコンパイルといった類の重い処理は避けた方が良さそうだ。ブラウザとテキストエディタ、それにターミナルしか使うつもりは無いので、その範囲なら多分大丈夫だろう。

騒音に関しては全く気にならないレベル。サウンドは、ドルビーのシールが付いているものの、スピーカーを鳴らしてみると、このサイズの筐体に期待してはならないことを思い知らされる。ただ、ヘッドホン端子は意外なくらい素直に鳴ってくれるので(無音時に微かなノイズが乗るものの)、ちょっとしたポータブルオーディオ代わりに使えるかも知れない。

初代 Eee PC は画面の解像度とストレージ容量があまりに厳しかったのでスルーしてきたが、901 になってかなり普通に使えるスペックになったと思う。本当のところ、この機種が発表されるまではほぼ同価格の MSI Wind を買うつもりでいたけど、901 は 6 セルバッテリー、SSD、20GB のオンラインストレージや StarSuite 8 が付くなど、思ったよりコストパフォーマンスが良さそうだったので、こちらを購入してみた(MSI Wind の出荷量が少なすぎて入手できなかったというのもあるが)。全体的に、不満になりそうな点が少なく、値段や機能、重量のバランスが良いと思う。特にバッテリーが五時間くらい保ちそうなのと、SSD なので動作中でも自由に本体を動かせる点は素晴らしい。

それにしても、ほとんど PDA の値段帯でここまで揃ったミニノート PC が買えるとは、良い時代になったものだ。ASUS が切り開いたこのジャンルは、HP や DELL も参戦して面白い市場になりそうなので、今後登場する機種にも期待したい。

[本][SF] ジャック・ウォマック『ヒーザーン』

Wednesday, July 2nd, 2008

ある朝、歩いて出勤するとき、わたしは危うく赤ん坊に殺されそうになった。その運命の瞬間、わたしはバス停留所の屋根の下を通っていたおかげで生き延び、その話をすることができる。

こんな書き出しから始まる、ジャック・ウォマックの小説『ヒーザーン』。ギブスンからさらにカルトかつマニアックな方向に突き進んだようなSF作家で、この小説はウォマックの六部作の第三作にあたるようだが、とりあえず単独でも読めるらしいので読んでみた。

正直言って、何度途中で投げだそうとしたか分からない。たかだか文庫本300ページちょっとの小説で、これほど時間がかかったのは久しぶりだった。とにかく至るところが読みにくく、台詞一つとっても譫妄患者のうわごとのように意味が取りにくい(近未来が舞台ということで、原文でも独自の省略語が使われているそうで、それを無理に日本語訳にしたためなのだろうか)。基本的に数人の中心人物のやり取りがメインの地味な話だけに、会話文が分かりにくいのはかなり厳しい。話自体もかなり難解で地味な、SFの名を借りた人間劇のようなものなので、万人どころかストレートなSFファンにもお勧めはできない。

だが、徹底して読みにくい反面、独特のスタイルを貫いているとも言える。近未来の独占企業による陰鬱な超格差社会や、その頂点に君臨する夫妻のどうしようもない人間性など、目を見張る部分も多い。文学系SFのカルト作品が読みたいという人には向いているかもしれない。

ジャック・ウォマック『ヒーザーン』