Archive for the '映画' Category


“Lucky Number Slevin”

Wednesday, October 18th, 2006

 機内で見た映画四本目、『ラッキー・ナンバー7』。知人宅を訪れた主人公のスレヴィンは、その知人と間違われて街のマフィアの抗争に巻き込まれてしまう。チンピラには小突かれ、警察からは怪しまれつつも、マフィアから強要された殺しの標的のもとを訪れるが、そこにプロの殺し屋(ブルース・ウィルス)が現れて──。

http://imdb.com/title/tt0425210/

 まず特筆すべきは、序盤からスレヴィンが全裸+タオル一枚の姿で現れ、パンツを履く間も無く延々と小突き回される点だろう。主人公がどうやって窮地を切り抜けるかよりも、主人公がいつパンツを履けるのかの方が気になる映画なんて、そうそうあるものではない。かと言って、ただの巻き込まれ型コメディとしてぼんやり観ていると、終盤ざっくりとひっくり返されるので、なかなか油断ならない。傑作サスペンスというほどではないし、映画館に観に行くタイプの作品でもないけど、一風変わったクライム・サスペンスとしてそれなりの佳作ではあると思う。(★★★★)
 主演のジョシュ・ハートネットは、三枚目不幸キャラの主人公として文句無し。対立し合うマフィアのボスに、安っぽい感もあるモーガン・フリーマンと、まだまだいけてるベン・キングズレー。そして、無口でほとんど動かない/喋らない殺し屋という(いつも通りすごく楽な)役に、ブルース・ウィルス。ここまではいいのだけど、話をかき回すアーパー系ヒロイン(言うなればキャメロン・ディアスあたりが似合いそうな)役が、ルーシー・リューという点にすごく違和感あり。『チャーリーズ・エンジェル』『キル・ビル』の印象が強すぎたからかなあ。

“Nacho Libre”

Monday, October 16th, 2006

 機内で見た映画三本目、『ナチョ・リブレ』。メキシコを舞台に、神父のナチョが孤児院(の食費)のために覆面レスラーとして戦う、レスリング・コメディ映画。

http://www.nacholibre.com/

 かつてパンの耳を奪い合った仲の男(貧相)とタッグを組んだナチョは、連戦連敗するものの、パフォーマンスが受けてそれなりのファイトマネーを得る。しかし、チャンピオンとの確執や、修道院に正体がばれたこともあり、最後の試合としてチャンピオンへ挑む。
 修道院が『薔薇の名前』級に古くさかったり、レスラーが意外といい動きをしてたり(主人公コンビ以外)、あらゆる面で期待を裏切らない展開だったりして、なかなか悪くない作品。ファレリー兄弟やトレイ・パーカーみたいな毒も皆無なので、全年齢向きでもある。ただ、日本でウケることはあり得ないだろうなあ、と思うのもまた事実。ルチャドールというテーマはちょっと微妙過ぎる。(★★★)
 ちなみに、ノースウェスト航空機内でこれを観ている最中、システムがクラッシュして再起動されてしまった。再起動中はコントローラーの通常操作は効かなかったが、代わりに古いインタフェースでの操作(Chボタンの+、-とか)が使えたので、どうやら旧来の動画配信システムが下に走っていて、別途GUIインタフェース用のOSをかぶせているらしい(クラッシュしたのは多分ここの部分)。チャンネルを変えていくと一瞬だけどLinuxの起動画面(とペンギン)が見えた。ディストリまでは不明。

“The Sentinel”

Friday, October 13th, 2006

 機内で見た映画二本目、『ザ・センチネル』。大統領暗殺の濡れ衣を着せられたシークレット・サービスの主人公が、同僚たちの追跡をかわしつつ真犯人の解明に奔走する。そんな、「それなんて『逃亡者』?」というあらすじの作品。

http://movies.foxjapan.com/sentinel/index2.html

 主演はマイケル・ダグラス×キーファー・サザーランドと、かなり男臭い取り合わせ。ヒロインも出さなきゃとでも思ったのか、若手の女捜査官も登場するが、『評決のとき』のサンドラ・ブロック程度の活躍しかしないので、安心して観ていられる。マイケル・ダグラスが自分の浮気のせいで窮地に陥るあたりも、いつものダグラス映画の通りだ。
 見所としては、逃亡を始めたマイケル・ダグラスがシークレット・サービスの知識を活かして同僚の裏をかくあたりか(それなんて『追跡者』?)。それ以外はとりたてて良くもなく悪くもない、典型的なso-so movie。(★★★)

“X-Men: The Last Stand”

Thursday, October 12th, 2006

 飛行機内で見た映画一本目。「味方は強大、敵はわずか」を合い言葉に、ウルヴァリン他X-MENたちが圧倒的暴力で敵をねじ伏せる痛快アクションシリーズも、遂に三作目。

http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD9311/index.html

 ミュータントの治療薬を巡るマグニートーの戦いと、最強のミュータントとして覚醒したジーンの暴走。この二つの話がまるで噛み合わないまま進行し、そのまま終わるという今作。脚本ははっきり言って酷い出来だが、映像は相変わらず金がかかっているし、マグニートーが思う存分暴れてくれるので、まあよしとしよう。『X-メン』にそれ以上のものを期待するのは、期待する方が悪いというものだ。(★★★)
 ただ、サイクロプスのあの扱いはあんまりだと思います。

『スパニッシュ・ホラー・プロジェクト 産婦人科』

Friday, August 25th, 2006

 スパホラ六本目、『産婦人科』。裏家業で中絶手術をしている診療所で、摘出した胎児の一体が処分(=トイレに流す)する前に紛失してしまう。やがて奇妙なことが起こり始め、ついには殺人事件までもが。そんな『悪魔の赤ちゃん』水子版みたいな話。

『スパニッシュ・ホラー・プロジェクト 産婦人科』

 ストレートに『産婦人科』という、あまりと言えばあんまりな邦題だが、その名に恥じぬくらい地味な内容。水子の霊なのか何なのかよく分からないものに主人公が振り回される、というだけのもので、ラストもおそろしく盛り上がりに欠けたまま終わる。おそらくは中絶反対というテーマを込めた作品なのだろうけど、いかんせん面白くない。残念ながら、ラリー・B級・コーエンの『悪魔の赤ちゃん』、ポランスキーの偏執的な傑作『ローズマリーの赤ちゃん』といった、「赤ちゃんホラー」ジャンルの偉大なる先駆者には遠く及ばない。ただ、ホルマリン漬けの胎児はちょっとリアルに気持ち悪かった。見所を挙げるとすればそれくらい。(★★)

『スパニッシュ・ホラー・プロジェクト リアル・フレンド』

Tuesday, August 22nd, 2006

 スパホラ五本目、『リアル・フレンド』。少女エストレヤは、レザーフェイスが心の友だちでスティーブン・キングが愛読書という、素敵な趣味の持ち主。そんなエストレヤの前に「現実」の危険な男が現れたとき、彼女の空想が本当のものになり──。

『スパニッシュ・ホラー・プロジェクト リアル・フレンド』

 とまあ、開始十分で「空想の友だちがいざというときに助けてくれる」系の話だと読めてしまう作品。ただこの映画が特徴的なのは、その友だちが『悪魔のいけにえ』のレザーフェイスや『吸血鬼ノスフェラトゥ』のノスフェラトゥといった、世界中の誰もが知ってるホラー界のヒーローたちだという点だ。レザーフェイスがいつも主人公に寄り添い、学校の教室で座っていたり、彼女が落ち込んでいるときには不器用に慰めたりする様は、なかなか他の映画で観れるものではない。そんな「心の友だちはレザーフェイス」というネタ一点だけで一時間以上ひっぱる、ちょっと微妙なホラー中編。(★★)

 ちなみに、世の中にはジェイソンVSレザーフェイスなんてものも。ただのチェーンソー振り回すだけの狂人が、宇宙からでも帰ってきたジェイソンに勝てるはずがない気もするけど、実際やられてるっぽい。

『スパニッシュ・ホラー・プロジェクト 悪魔の管理人』

Thursday, August 17th, 2006

 スパニッシュ・ホラー・プロジェクト、四本目。古ぼけたアパートにやって来た若いカップルが、そこの管理人(オバサン)に襲われるという、それだけの話。本当にそれだけ。都会の集合住宅における入居トラブルがエスカレートしてどうこう、みたいな展開を想像していたけど。そんな社会的テーマは毛ほどもなく、開始十分後にはもう管理人が武器を持って追ってきている、それくらい余計な贅肉の無いB級ホラー映画。起「管理人が襲いかかってくる」、承「管理人から逃げまどう」、転「管理人に反撃する」、結「管理人に結局勝てない」、という感じ。

『スパニッシュ・ホラー・プロジェクト 悪魔の管理人』

 主人公たちがたまたま訪れた建物に異常者がいて追いかけてくる、なんて作品はそれこそ幾万とあるが、舞台のアパートがなかなか良い雰囲気を出しており、薄暗い灰色基調の画質と相まって、そのへんの100円ビデオセールのホラー映画とは一線を画している。とにもかくにもシンプルに、だが基本に忠実かつ丁寧に仕上げたB級ホラーの良作。『ダークネス』の監督だと後から知った。なるほど。(★★★)

『スパニッシュ・ホラー・プロジェクト エル・タロット』

Tuesday, August 15th, 2006

 スパニッシュ・ホラー・プロジェクトの三本目。ものすごく大雑把に言うと、老作家が故郷に戻って昔付き合っていた不思議な女のことを回顧する、という話。現在と過去を交互に描きつつ、過去の出来事とその真相が明らかになっていく、いわゆる「スティーブン・キングの老人昔話」系。

『スパニッシュ・ホラー・プロジェクト エル・タロット』

 そんな、ジャンル的にはホラーだけどちょっと良い話っぽいあたりを狙ったのだろうけど。キング作品の魅力である、妙に細かいエピソードの描写や、やり過ぎ気味なハッタリに欠けており、どうにも地味で退屈という印象がぬぐえない。『トワイライト・ゾーン』系の30分枠ならともかく、この内容とオチで90分弱はちょっと厳しい。フランスの(クソ退屈な)芸術系映画だって全然平気、という人向け。(★★)

『スパニッシュ・ホラー・プロジェクト クリスマス・テイル』

Thursday, August 10th, 2006

『スパニッシュ・ホラー・プロジェクト クリスマス・テイル』

 スパニッシュ・ホラー・プロジェクトの一編、『クリスマス・テイル』。人気の無い森の中で、子供たちは涸れ井戸に落ちたサンタ姿の女性を見つける。だがその女性は、実は逃走中の銀行強盗で……という導入部で『サンタが殺しにやってくる』や『悪魔のサンタクロース』とかのサンタ殺人鬼? と思っていたら。子供たちが女を井戸に閉じこめたままいびり殺したら、女サンタがゾンビとなって襲ってくる、というスパニッシュ・ゾンビ映画でした。

20060809_01.jpg

 で、色々あって子供たちは女ゾンビを撃退して井戸に落とし、「今日のことは絶対だれにも言わないこと」と固く誓い合って解散する。と、スティーブン・キングなら絶対に三十年後あたりに再び事件が起こりそうな展開だけど、そこは中編テレビ映画のこと、その日のうちに女ゾンビが復活して子供たちを血祭りに上げる。そんな感じの、すっきりした後味の小品だった。
 個人的には、子供たちがゾンビ退治の参考にする作中のゾンビ映画(『フラッシュ・ゴードン』時代っぽいチープな感じの)や、鉢巻きを巻いて窓ふき訓練している男子(『ベスト・キッド』?)あたりが失笑どころ。(★★★)

『スパニッシュ・ホラー・プロジェクト ベビー・ルーム』

Monday, August 7th, 2006

 スペインの中堅どころの映画監督が揃いも揃ってホラー映画を撮るという、スパニッシュ・ホラー映画ファンにとってはたまらない(それ以外の人にとっては割とどうでもいい)企画、スパニッシュ・ホラー・プロジェクト。その作品の一つの『ベビー・ルーム』を。

20060807_01.jpg

 いわくつきの家を買ったら子供部屋に何かいて、それがどうやら監視カメラのモニタにしか映らず、どういうことかと調べていたら平行世界に迷い込んで、そこにいた殺人者の正体が実は……という感じの幽霊屋敷系超自然スリラー。それっぽく理屈を説明する場面がなかなか微妙で、
「シュレディンガーの猫を知っているか?」
「(略)猫を助けるには?」
「不可能だ。下手をすると自分が箱の中に閉じこめられる
 スペインあたりでは、シュレディンガーの猫はそういう話だと思われているのだろうか。
 まあ、作品自体はそれなりに。ビデオカメラにだけ違う姿の屋敷が映る、という他のホラー映画幾つかで観た気がしないでもないギミックを、そこそこ効果的に使っている。低予算テレビ映画という枠で観れば、十分満足のいくレベル。(★★★)