結果的にお金を使って失敗してしまったからそのように結論するしかないのかもしれませんが、下記のエントリは個人的には何だかなぁという印象です。おそらく両者とも 「起業に会社はいらない」 とか 「企業の競争相手が個人になる」 とか、いわゆるスモールスタートを実践してもいないのに美化しているから余計にそう感じるのでしょうね。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20090603/331243/
http://japan.cnet.com/blog/kenn/2009/05/01/entry_27022150/
ハートレイルズは、分かっている人は分かっていると思いますが、スモールスタートの典型例のような企業です。働く場所の制約は 3 年前の創業時からありませんし (在宅勤務可)、Google や Amazon のクラウドを有効活用することで固定費を最小化しています。(蛇足ですが Google や Amazon よりもずっと安いインフラで維持できるサービスもあり、そういった部分にはクラウドは活用していません。)
ただ、勘違いしてはいけないのは、そうしたローコストな体制でいることは所詮リスクヘッジに過ぎず、良いソフトウェア、良いサービスを生み出すことにはつながらない直結しない、ということです。例えば、1 人で開発するサービスには月に最大 1 人月分しかサービスの改善等を行えないという限界が明確にあり、それは止むを得ないことではあっても決して良いことではありません。
ハートレイルズはエンジニア 3 人で受託開発から自社サービスの開発、運営までしているので、日々、様々な限界に突き当たっています。もっとお金があれば、もっとエンジニアがいればと泣く泣く様々なことを諦め、ある意味では様々なチャンスを棒に振ってきているのです。それは時にはまさに身を切るような思いで、シリコンバレーがどうだとか、そんな他人事ではとても片付けられません。(逆にハートレイルズと似たような会社に所属するエンジニアはみな、上記のエントリの人達みたいにお金があればもっと色々なことができるのになぁと、羨ましくて仕方がないのではないでしょうか?)
私は起業にお金をかけられる余裕があるなら、きちんと会社を設立し、身の丈に合った範囲でお金をかけるべきだと思います。例えば会社を設立せずに 1 人でサービスを開発、運営するということは、それ自体が既に日本にも大勢いる趣味プログラマと何の差別化にもなりません。(そして日本で趣味レベルのサービスが成功したという例は数えるほどしかないと思います。)
ましてや、世界のソフトウェアやサービスと戦うのならなおのこと、1 人でできることなどたかが知れているし、起業や採用といったリスクを抱える覚悟もないのに互角に戦えるはずがないでしょう。(もちろん例外はありますが、例外になることに賭けたって仕方ないでしょう。)
以上、日本のソフトウェア、サービス関連の起業がスモールスタートばかりになったら面白くも何ともないので書いてみました。(スモールスタートを否定しているわけではありません。良い点や悪い点を踏まえた上で、身の丈に合った起業をするのが一番だということです。誰も彼もが闇雲にスモールスタートしても、それは日本の IT 産業の活性化にはつながらないでしょう。)
P.S.
そういうハートレイルズでは現在 Ruby もしくは PHP の得意なエンジニア (正社員、アルバイト) を募集中です。興味のある方はぜひお問い合わせください!